小説コスメディナ(4) モノグラム
Date:2015/8/25

主人公:野村純花(のむら すみか)
29歳のOL。
都内の小さな会社で事務をしている。
目立つタイプではなく、真面目でおとなしいと評価されることが多い。
純花の会社はもともと女性社員が少ないうえ、結婚や出産でやめてしまう人も多い。
唯一10年以上勤務していて、数名の部下もまとめているのが、純花のあこがれの存在でもある、秋野楓(かえで)だ。
秋野は仕事ができて頭の回転が速いのに、決して出しゃばるわけでもなく、周囲への気遣いもとても自然にできる。
一緒にいてとても心地よい空気が流れる、素敵な女性だ。
そんな秋野が愛用しているのが、ルイ・ヴィトンのモノグラムのバッグで、入社当初から、純花はいつか自分も秋野のような、モノグラムのバッグを買いたいと思いつつ、なかなかその夢を叶えられずにいた。
だがついに、今年の夏のボーナスが思っていたよりも多かったことで、いつも横目に通りすぎるだけだったルイ・ヴィトンの店舗に入る決心をした。
そして、ネヴァーフルと名付けられた、シンプルだけど美しいフォルムのトートバッグを買ったのだ。
慣れない高級店で緊張しながら、勢いに任せて会計し、ドキドキしたまま家に帰って、改めてモノグラムのバッグを手にとった。
肩にかけて、鏡の前に立ってみる。
やっと買えた、憧れのモノグラム。
だけど・・・。
高級感ただよう光沢のあるバッグは、鏡の中の純花に対してひどく浮いてみえて、自然になじんだ秋野のモノグラムとは全く別物に見えた。
私には、不釣り合いだったのかな…?
数日後、秋野と偶然ランチをともにする機会があったので、「実は・・・」と、秋野に憧れてモノグラムを買ったけど、自分には全然似合わないとこぼした。
秋野は、「そうなの?」と照れくさそうに笑ったあと、「私もそうだったよ。使っているうちに、そのうちなじむよ。」と微笑んだ。
改めて、秋野のモノグラムを見つめてみる。
丁寧に手入れされ、傷んだところは全くないけれど、持ち主と歩んだ年月を感じさせる、自然な色あせが、逆に新品にはない美しさを生んでいる。
若く見えることに固執するのではなくて。
若い時の自分にはなかった、全く別の美しさ。
美しく齢を重ねるっていうのは、こういうことなのかもしれないな。
美しく齢を重ねるためのエイジングケアを。
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